
樹脂成形の見積りを見たとき、
「思っていたより金型費が高い」
と感じたことはないでしょうか。
樹脂金型の費用は、完成した製品を見ただけでは分かりにくく、
どうしても“感覚的に高い”と受け取られがちです。
しかし実際には、金型費の多くは
成形を安定させるための技術的な作り込みに使われています。
この記事では、
「なぜその金型費になるのか」
を、設計・構造・調整という技術的な視点から解説します。
Contents
樹脂金型は「形を作る道具」ではない
樹脂金型は、単に製品の形を写し取るための道具ではありません。
- 溶融した樹脂を
- 狙った流れで充填し
- 偏りなく冷却し
- 反りや寸法変動を抑え
- 繰り返し安定して取り出す
この一連の成形条件そのものを、
金型の中に作り込む装置です。
金型費とは、
「形状の値段」ではなく
成形を成立させる条件の値段と言えます。
金型費の大半は「完成品を見ても分からない部分」
樹脂金型のコストは、完成した製品を見てもほとんど分かりません。
費用の多くは、見えない内部構造に使われています。
冷却設計|金型性能を決める最重要ポイント
冷却は、樹脂成形において極めて重要な要素です。
冷却設計が不十分だと、
- サイクルタイムが長くなる
- 反りや変形が出やすくなる
- 寸法が安定しない
といった問題が起こります。
そのため金型では、
- 冷却水路の位置
- 水路径
- 水路本数
- 製品形状との距離
を考慮した設計が必要になります。
ここを省略すると、
「成形はできるが、量産で安定しない金型」
になってしまいます。
金型剛性|バリと寸法安定性を左右する要素
成形時、金型には大きな型締め力がかかります。
剛性が不足すると、
- 合わせ面が開く
- バリが発生する
- 成形条件がシビアになる
といったトラブルにつながります。
そのため、
- プレート厚
- 支え構造
- 型締め力の分散
などを考慮した設計が必要です。
一見すると「分厚すぎる」「オーバースペック」に見える構造も、
量産安定性を確保するために必要な設計であることが多くあります。
可動構造|「動けばいい」では済まない世界
アンダーカットや横穴に対応するため、
スライドや入子などの可動構造が使われます。
しかし可動構造は、
- 繰り返し精度
- 摩耗
- ガタ
- 潤滑
といった課題を常に抱えます。
そのため、
- ガイド構造
- 当たり調整
- 摩耗対策
まで含めた設計・加工が必要になります。
簡略化しすぎると、
初期は問題なくても、量産途中で不具合が出るケースが少なくありません。
組立・当たり調整|最後に効いてくる職人仕事
金型は、加工が終わった時点で完成ではありません。
- 合わせ面の当たり
- 可動部の動き
- 離型性
これらは、組立・調整工程で決まります。
この工程は機械化が難しく、
最終的には人の経験と手作業に依存します。
「図面通り作ったのに安定しない金型」は、
この調整不足が原因になっていることが多くあります。
製品設計が金型費を押し上げるケース
金型費が高くなる原因は、
金型側ではなく製品設計側にある場合も少なくありません。
よくある例として、
- 抜き勾配がほとんど取れていない
- 肉厚が不均一
- 不要に厳しい外観要求
- アンダーカットが多い
これらはすべて、
金型構造と調整工数を増加させます。
設計段階で整理できれば、
金型費だけでなく、成形の安定性も向上します。
技術的に見た「削れるコスト」と「削れないコスト」
金型費を抑えることは可能ですが、
それには技術的な判断が必要です。
調整できる可能性がある部分
- 外観要求の緩和
- 不要形状の削減
- 成形性を優先した設計変更
削るべきでない部分
- 冷却設計
- 剛性
- 可動部の精度
ここを削ると、
量産時の不良やトラブルとして必ず跳ね返ってきます。
まとめ|金型費は「成形を安定させるための投資」
樹脂金型の費用は、
単なる「形の値段」ではありません。
- 流動を制御する
- 冷却を均一にする
- 繰り返し精度を確保する
これらを成立させるための
技術の集合体が金型です。
金型費が高く感じられるときは、
その裏側で何を成立させようとしているのかを
一度分解して考えてみると、見え方が変わります。
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